しかも今夜のSAHOの歌声には、一人立ちを始めた強ささえ感じられる響きがあった。
SAHOは歌いながら、向かい合っている僕たち一人ひとりに目を合わせていく。
例えばこんなシーン。
舞台でシンガーが歌っている。
そこへ、遅れて入って来た馴染みの客。
シンガーは彼の存在に気づき、さりげなく手を振る。
SAHOが歌っている空間には、そんなワンシーンを想像させる雰囲気があるのだ。
聴く者は、知らず知らずのうちに手をひかれていく……。