久しぶりのSAHOは、また一皮剥けたような軽やかさで、
僕らの前に現れていたのだ。
「じゃあ次回は必ず」などと、
手前返事でSAHOの誘いに答えしてしまった僕は、
ちょっと恥ずかしかったが……、
ふと目を上げたとき、僕は、そこで歌っているのが
いつものSAHOだったことに気がついた。
彼女には、歌っている途中、マイクを持っていない手を
“空手チョップ”をするようにピンと伸ばす“手グセ”があるのだ。
それは何だか、自分だけが知っている秘密を、
密かに確認できたような気分だった。